2026.10.05
民法
相続放棄と「遺産を相続しない」という遺産分割協議の違い
こんにちは、京から相続相談室の税理士の中井です。
引き続き相続放棄についての論点をみていきましょう。
参考記事はこちら 相続放棄と空き家の管理義務
参考記事はこちら 相続放棄と生命保険金
相続のご相談を受けていると、「私はもう親からは何ももらいたくなかったので、遺産分割協議書に相続しませんってサインしたのです。相続放棄ですね」と言われることがあります。しかし、厳密に言えば、遺産分割協議書で「相続しない」とサインことと、法律上の「相続放棄」は全く別のものです。
両者は、最終的にその人が遺産を取得しないという点では似ていますが、その法的な意味は大きく異なります。
民法上の相続放棄は、家庭裁判所に申述して行う手続です。相続放棄をした人は、法律上、その相続について「初めから相続人とならなかったものとみなされる」とされています。したがって、相続放棄をすると、預貯金や不動産などのプラスの財産を相続しないだけではなく、原則として、亡くなった方が負っていた借金などのマイナスの財産についても相続することがありません。また、相続放棄には原則として、相続の開始を知った時から3か月以内という期間制限があります。
つまり、相続放棄は単に「財産はいりません」と意思表示するだけのものではなく、相続人としての地位そのものを失わせる手続なのです。
これに対して、遺産分割協議書に、「相続人○○は、一切の遺産を取得しない」などと記載して署名・押印した場合です。この場合は、通常、相続放棄をしたことにはなりません。この場合、その人は相続人のままです。
相続人全員で話し合い、「この財産は長男が取得する」「この預金は長女が取得する」「私は何も取得しない」というように、相続人の間で遺産の分け方を決めたことになります。
例えば、父が亡くなり、長男と次男の2人が相続人だったとします。
次男が、「私は財産はいらないので、すべて長男が相続してください」という内容の遺産分割協議書に署名したとしても、次男は相続放棄をしたわけではありません。次男は相続人であることに変わりはなく、相続人として遺産分割協議に参加した結果、遺産を取得しないことになったということです。
この違いが特に重要になるのが、亡くなった方に借金などの債務がある場合です。例えば、父の財産が預金2,000万円、借金1,000万円で、長男と次男が相続人だったとします。次男が「私は財産はいらない」と考え、遺産分割協議で何も取得しないことにしたとしても、それだけで次男が相続債務から免れるわけではありません。遺産分割協議は、基本的には相続人同士で遺産をどのように分けるかを決めるものだからです。
したがって、借金がある(あるかもしれない)ことを理由として相続そのものをしたくないのであれば、単に「財産はいらない」と遺産分割協議書に署名するのではなく、相続発生から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄を手続きする必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
相続のご相談はお気軽に京から相続相談室へ。こちらからご連絡ください。
https://kyoto-mirai.co.jp/contact
引き続き相続放棄についての論点をみていきましょう。
参考記事はこちら 相続放棄と空き家の管理義務
参考記事はこちら 相続放棄と生命保険金
相続のご相談を受けていると、「私はもう親からは何ももらいたくなかったので、遺産分割協議書に相続しませんってサインしたのです。相続放棄ですね」と言われることがあります。しかし、厳密に言えば、遺産分割協議書で「相続しない」とサインことと、法律上の「相続放棄」は全く別のものです。
両者は、最終的にその人が遺産を取得しないという点では似ていますが、その法的な意味は大きく異なります。
民法上の相続放棄は、家庭裁判所に申述して行う手続です。相続放棄をした人は、法律上、その相続について「初めから相続人とならなかったものとみなされる」とされています。したがって、相続放棄をすると、預貯金や不動産などのプラスの財産を相続しないだけではなく、原則として、亡くなった方が負っていた借金などのマイナスの財産についても相続することがありません。また、相続放棄には原則として、相続の開始を知った時から3か月以内という期間制限があります。
つまり、相続放棄は単に「財産はいりません」と意思表示するだけのものではなく、相続人としての地位そのものを失わせる手続なのです。
これに対して、遺産分割協議書に、「相続人○○は、一切の遺産を取得しない」などと記載して署名・押印した場合です。この場合は、通常、相続放棄をしたことにはなりません。この場合、その人は相続人のままです。
相続人全員で話し合い、「この財産は長男が取得する」「この預金は長女が取得する」「私は何も取得しない」というように、相続人の間で遺産の分け方を決めたことになります。
例えば、父が亡くなり、長男と次男の2人が相続人だったとします。
次男が、「私は財産はいらないので、すべて長男が相続してください」という内容の遺産分割協議書に署名したとしても、次男は相続放棄をしたわけではありません。次男は相続人であることに変わりはなく、相続人として遺産分割協議に参加した結果、遺産を取得しないことになったということです。
この違いが特に重要になるのが、亡くなった方に借金などの債務がある場合です。例えば、父の財産が預金2,000万円、借金1,000万円で、長男と次男が相続人だったとします。次男が「私は財産はいらない」と考え、遺産分割協議で何も取得しないことにしたとしても、それだけで次男が相続債務から免れるわけではありません。遺産分割協議は、基本的には相続人同士で遺産をどのように分けるかを決めるものだからです。
したがって、借金がある(あるかもしれない)ことを理由として相続そのものをしたくないのであれば、単に「財産はいらない」と遺産分割協議書に署名するのではなく、相続発生から3か月以内に家庭裁判所に相続放棄を手続きする必要があります。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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