2026.10.17
民法
養子縁組と相続税
こんにちは、京から相続相談室の税理士の中井です。
前々回に養子縁組の話をしました。
参考記事:養子縁組した子どもに相続権はある?実子との違いを税理士がわかりやすく解説
孫を養子にすることを検討する理由の一つに、相続税対策があります。孫を養子にすれば、一定の制限はあるものの、相続税の基礎控除額が増える可能性があります。また、祖父母から子、さらに孫へと財産が相続される過程を経ず、孫に直接財産を承継させることもできます。
しかし、養子縁組は、単に相続税の負担を軽減するための手続ではありません。
民法上、養子縁組が成立すると、養親と養子との間に法律上の親子関係が生じます(民法第809条)。普通養子縁組の場合、孫は祖父母の法律上の子となり、祖父母の相続において、実子と同じく第1順位の相続人となります。
その一方で、養子縁組によって生じるのは相続権だけではありません。養親と養子の間には法律上の親子関係に伴う権利義務が生じ、相互に扶養義務を負うことになります(民法第877条第1項)。また、普通養子縁組では、孫と実親との親子関係も存続します。
つまり、孫を養子にするということは、相続税の計算上の人数を増やすというだけではなく、祖父母と孫との間に法律上の親子関係を成立させることなのです。
他の相続人への影響も考える必要があります。孫を養子にすると、孫自身が独立した相続人になります。その結果、他の相続人の法定相続分が変わる場合があります。
例えば、祖父に妻と長男・次男がおり、長男の子である孫を養子にしたとします。この場合、祖父の相続人は妻・長男・次男・孫養子となり、法定相続分は妻が2分の1、長男・次男・孫養子がそれぞれ6分の1となります。孫を養子にしなければ、長男と次男の法定相続分はそれぞれ4分の1です。孫養子が相続人に加わることによって、長男・次男の法定相続分はそれぞれ減少します。
もちろん、実際の遺産分割は相続人全員の協議などによって決まるため、法定相続分どおりに分けなければならないわけではありません。しかし、孫を養子にすることが、他の相続人の取得額や感情に影響を及ぼす可能性は十分に考えられます。相続税を軽減する目的で行った養子縁組が、かえって親族間の対立を招くことになれば、本来の目的を達成できたとはいえないでしょう。
さらに、税法上の注意点もあります。相続税法では、被相続人の孫が養子となった場合、原則として相続税額の2割加算の対象となります(相続税法第18条)。ただし、孫が代襲相続人となっている場合などには例外があります。
孫を養子にすることで相続税の基礎控除額が増えたとしても、2割加算によって税負担が増える場合があります。そのため、基礎控除額が増えるという一点だけで、相続税対策として有効かどうかを判断することはできません。
養子縁組をする前に考えておきたいことは下記のとおりです。孫を養子にすること自体が問題なのではありません。孫に財産を直接承継させたい、家業を継がせたいなど、まずは家族としての合理的な理由が優先すべきものと考えます。少なくとも、相続税の軽減だけを目的として安易に判断しないことです。
養子縁組によってどのような親族関係が生じるのか、それが家族や家業にとって良い事なのか。他の相続人の相続分にどのような影響があるのか、将来の遺産分割に支障が生じるおそれはないか、そして相続税の負担は実際に軽減されるのか。これらを総合的に検討する必要があります。
養子縁組による相続税対策が、すべて否定されるわけではありません。最高裁判所も、相続税の節税を目的とすることだけを理由に、養子縁組が無効になるとは判断していません(平成29年1月31日)。
しかし、養子縁組が民法上有効であることと、相続税の計算上、その養子を法定相続人の数に算入できることは別の問題です。相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、相続税法第63条によって、養子を法定相続人の数に算入しない取扱いが認められています。
繰り返しますが、養子縁組については、まずはそれによって生じる法律上の親子関係や他の相続人への影響が大切です。相続税法上の取扱いはその次に検討すべきものと私は考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
相続のご相談はお気軽に京から相続相談室へ。こちらからご連絡ください。
前々回に養子縁組の話をしました。
参考記事:養子縁組した子どもに相続権はある?実子との違いを税理士がわかりやすく解説
孫を養子にすることを検討する理由の一つに、相続税対策があります。孫を養子にすれば、一定の制限はあるものの、相続税の基礎控除額が増える可能性があります。また、祖父母から子、さらに孫へと財産が相続される過程を経ず、孫に直接財産を承継させることもできます。
しかし、養子縁組は、単に相続税の負担を軽減するための手続ではありません。
民法上、養子縁組が成立すると、養親と養子との間に法律上の親子関係が生じます(民法第809条)。普通養子縁組の場合、孫は祖父母の法律上の子となり、祖父母の相続において、実子と同じく第1順位の相続人となります。
その一方で、養子縁組によって生じるのは相続権だけではありません。養親と養子の間には法律上の親子関係に伴う権利義務が生じ、相互に扶養義務を負うことになります(民法第877条第1項)。また、普通養子縁組では、孫と実親との親子関係も存続します。
つまり、孫を養子にするということは、相続税の計算上の人数を増やすというだけではなく、祖父母と孫との間に法律上の親子関係を成立させることなのです。
他の相続人への影響も考える必要があります。孫を養子にすると、孫自身が独立した相続人になります。その結果、他の相続人の法定相続分が変わる場合があります。
例えば、祖父に妻と長男・次男がおり、長男の子である孫を養子にしたとします。この場合、祖父の相続人は妻・長男・次男・孫養子となり、法定相続分は妻が2分の1、長男・次男・孫養子がそれぞれ6分の1となります。孫を養子にしなければ、長男と次男の法定相続分はそれぞれ4分の1です。孫養子が相続人に加わることによって、長男・次男の法定相続分はそれぞれ減少します。
もちろん、実際の遺産分割は相続人全員の協議などによって決まるため、法定相続分どおりに分けなければならないわけではありません。しかし、孫を養子にすることが、他の相続人の取得額や感情に影響を及ぼす可能性は十分に考えられます。相続税を軽減する目的で行った養子縁組が、かえって親族間の対立を招くことになれば、本来の目的を達成できたとはいえないでしょう。
さらに、税法上の注意点もあります。相続税法では、被相続人の孫が養子となった場合、原則として相続税額の2割加算の対象となります(相続税法第18条)。ただし、孫が代襲相続人となっている場合などには例外があります。
孫を養子にすることで相続税の基礎控除額が増えたとしても、2割加算によって税負担が増える場合があります。そのため、基礎控除額が増えるという一点だけで、相続税対策として有効かどうかを判断することはできません。
養子縁組をする前に考えておきたいことは下記のとおりです。孫を養子にすること自体が問題なのではありません。孫に財産を直接承継させたい、家業を継がせたいなど、まずは家族としての合理的な理由が優先すべきものと考えます。少なくとも、相続税の軽減だけを目的として安易に判断しないことです。
養子縁組によってどのような親族関係が生じるのか、それが家族や家業にとって良い事なのか。他の相続人の相続分にどのような影響があるのか、将来の遺産分割に支障が生じるおそれはないか、そして相続税の負担は実際に軽減されるのか。これらを総合的に検討する必要があります。
養子縁組による相続税対策が、すべて否定されるわけではありません。最高裁判所も、相続税の節税を目的とすることだけを理由に、養子縁組が無効になるとは判断していません(平成29年1月31日)。
しかし、養子縁組が民法上有効であることと、相続税の計算上、その養子を法定相続人の数に算入できることは別の問題です。相続税の負担を不当に減少させる結果となる場合には、相続税法第63条によって、養子を法定相続人の数に算入しない取扱いが認められています。
繰り返しますが、養子縁組については、まずはそれによって生じる法律上の親子関係や他の相続人への影響が大切です。相続税法上の取扱いはその次に検討すべきものと私は考えています。
最後までお読みいただきありがとうございました。
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